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会社分割

会社分割とは?

会社分割とは、会社の営業を構成する権利義務を他の会社に包括的に承継することにより会社を分割させる制度です。
別会社にすることから分社とも言います。

平成12年の商法改正以前は、会社の一部を切り離す方法として、事業譲渡や現物出資による方法が用いられてきましたが、検査役による調査が必要であったり、財産・債務の移転について個別手続きが求められたり、譲渡益課税の問題など様々な問題がありました。

しかし、平成12年の商法改正により会社分割制度が認められるようになり、会社分割においては、検査役の調査は不要になり、また、財産・債務の移転は包括承継されることとされ、個別の移転手続きは不要になりました。

また、税務上も一定の要件を満たす分割については、譲渡益課税の繰延を認めるなど、より機動的な組織再編が可能となりました。

さらに、平成18年の新会社法では、吸収分割の場合に、承継会社が分割会社に交付すべき対価の柔軟化が図られ、承継会社株式ではなく全部を金銭等で交付することが可能とされました。(ただし、適用時期は新会社法施行の日から1年間延長されています。)
新設分割と吸収分割
会社分割には、分割する会社の営業を承継する会社が新しく設立される「新設分割」と、既存の会社が承継する「吸収分割」があります。

この場合、営業を移転する会社を分割会社といい、営業を承継する会社を分割承継会社といいます。

また、発行する株式の割当を分割会社に割り当てるものを「分社型分割」といい、株式を分割会社の株主に割り当てるものを「分割型分割」といいます。

これに関して、平成18年の新会社法では分割型分割の規定は廃止され、分割型分割は「分社型分割+剰余金の配当」として整理されました。

なお、分割会社が対価として受けた承継会社または新設会社の株式を剰余金の配当により分割会社の株主に分配する場合に、その配当等については財源規制が課されません。
従って、実質的には、旧商法の分割型分割と同様の結果にすることが可能です。
分社型(新設)分割

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どのようなケースで用いられるか?
会社分割は、主に特定事業部門の分社化や不採算部門の切り離し等により、経営の効率化や責任の明確化を図るために行われます。

具体的には、会社の中で労働条件の異なる製造部門を子会社化したり、不採算部門を清算するために切り離すといったケースがあります。

その他、特定部門を第三者に売却する際に、会社分割が用いられることもあり、部門のまま売却するよりも、別会社にするほうが売却の範囲を明確にできる点があります。

また、独占禁止法の改正により純粋持株会社の設立が可能になりましたが、持株会社を設立する方法として会社分割が用いられることもあります。

会社分割の手続

会社分割は、会社法上新設分割と吸収分割に分けて多くの手続きを要求しています。

新会社法においても会社分割の手続は基本的に変更ありません。主な手続きは次のとおりです。

ア 分割契約書の作成・締結(新設分割の場合は「分割計画書の作成」)
イ 労働者との協議
ウ 株主総会承認決議
エ 債権者保護手続き
オ 分割登記

まず、分割契約書で分割比率および増加資本金の額が決められます。

分割比率とは、分割会社の株式1株に対して、分割承継会社の株式を何株割り当てるかということです。

また、会社法上増加資本金の額は、一定の範囲内であることが求められています。
労働者との協議
以上の流れについては、合併と同様ですが、会社分割の場合には、労働承継法により、労働者の権利保護が図られるため、労働者の理解と協力を得る努力が必要になります。
株主総会承認決議
吸収分割においては、分割会社及び承継会社で原則として株主総会の承認を得る必要があります。

ただし、新会社法では、分割会社から移転する資産が総資産の20%以下の場合には分割会社での株主総会決議は不要とされました。

また、承継会社も受入れ資産が純資産の20%以下の場合には株主総会決議が不要となります。

会計処理上の留意点

会社分割によって切り出される移転事業に対する支配が継続するか否かで会計処理が決まることになります。

a.分割承継会社が子会社または関連会社に該当する場合には、分割会社が取得する株式は移転資産の適正な帳簿価額相当額を計上します。
b.支配が継続しない場合、分割会社が取得する株式は、その時価または移転事業の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価によって評価し、移転資産の適正な簿価との差額を移転損益として計上します。

なお、分社型分割と分割型分割とで会計処理の違いは特にありません。

新会社法において分割型分割は、分社型分割とこれにより受け取った分割承継会社の株式の分配という2つの取引と考えており、事業分離等に関する会計基準でも同様の考え方が示されています。
したがって、分割型分割について特段の会計処理を定めておらず、分社型分割と同様の会計処理が適用されることになります。

税務上の留意点

会社が分割をした場合、原則として分割法人から承継法人へ移転された資産・負債が時価で譲渡されたものとして取り扱われるので、これによって生じた譲渡損益について課税されることになります(非適格分割)。

しかし、一定の要件を満たす適格分割の場合には、税務上、帳簿価額により資産・負債を引継ぐものとして課税が繰延べられます。

適格分割の要件は次のとおりです。

a.分割により交付される財産が分割承継法人の株式のみであること。金銭等が交付される場合には適格分割に該当しない。
b.分割型分割では、分割承継法人株式が分割法人株主の持分割合に応じて交付される按分型分割であること。
c.上記a.b.の要件を満たし、かつ分割法人および分割承継法人の持分関係が100%である企業グループ内の分割である場合には適格分割に該当する。
d.上記a.b.の要件を満たし、かつ分割法人および分割承継法人の持分関係が50%超100%未満である企業グループ内の分割で事業継続等の要件を満たす場合には適格分割に該当する。
e.上記a.b.の要件を満たし、かつ共同事業を営むための分割として事業継続等の要件、事業関連要件、事業規模要件、株式保有継続要件を満たす場合には適格分割に該当する。