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壺中対談Interview

2024.04.19
黄砂飛来に思う事

今年も黄砂飛来のニュースをよく耳にする季節となりました。

花粉だけでも大変なのに黄砂までもと本当にゾッとするのですが、東アジア内陸部の砂漠などからやってくる事に少し感心してしまっている自分もいます。

僕が南京に留学していた当時、日本から南京への直行便はまだなく、必ず上海を経由して電車に乗り換えて南京を目指すのが普通であった。当時の中国の電車事情はお世辞にも良いとは言えず、特急の切符の当日購入が難しい時もあり、一度鈍行列車にしか乗れない時があった。上海から南京まで当時の一番早い列車で約3時間、僕がその時ようやく手に入れることができた鈍行列車は7時間くらいかかった記憶がある。ただでさえ留学したばかりで中国語もおぼつかない状態で、中国の人でごった返している硬座(ハードシート)に座り、ただただ緊張するばかり、その時列車の上の方からある視線を感じ、そっと上の方を見てみると、頭上の荷物置き場に寝転がっている人と目があった。その時緊張はピークに達し、その後は放心状態で7時間じっと固まり続けていた。永遠にも思えた7時間にも、終わりがあり、深夜の南京駅でタクシーを捕まえ、大学の寮に着いた頃にはもうヘトヘトであった。自分の部屋に戻り、荷物の整理をしながら、何の気なしに壁に貼ってあった中国地図を見た時、この日一番の恐怖を感じた。中国地図に載っていた上海から南京までの距離はほんの数センチ、その奥にはずっとずっと国土が続いているではないかと。7時間くらいで永遠を感じていては、この国では暮らしていけない。とんでもない国に来てしまったと。

そんな奥の奥の方から飛来してくる黄砂に、感心してしまうことがわかっていただけたでしょうか。

 

菊山武士

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