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2020.07.02
偉大なる常識人
去年旅立たれる準備をされたそうな。奥様にその人には送る、送らないの指示を出されたそうな。去年三十数年ぶりに頂いたK部長の電話の向こうの声は僕が新人の札幌支店時代と少しも変わらなかった。当時証券業界のすさまじいまでのノルマ競争の時代。日々の営業の中で毎日が人間の本性が赤裸々に出る。K部長も「それは無茶」と言いながらも証券レディーの女性営業員に指示を出していた。そんななかK部長がよく行く札幌郊外の手稲にある釣り堀に誘われた。黙って麦わら帽子をかぶりくわえ煙草で夏のキラキラする湖面を観ていた。同期も3年目ですべてやめ、毎日、毎月ノルマに追われ、栄転する同期の異動も気に掛けながら言いようもない不安と焦燥の日々。
ボーとして釣り先をみると糸が強く引き、大きな黒い鯉が。釣れた真っ黒な大きな鯉をつけたままK部長の手元まで持っていくと、「おめえさん、外せいのか」とあきれ顔。その後二度と誘ってはくれなかった。その後栄転し100年の歴史に幕を閉じる社長、人事権を使いまくる副社長。過ぎ去ってみれば組織に身を任せたなかでの常識人K部長。偉大なる常識人だった。北国に7年ほどいたが、雪の札幌でなく僕にとってはK部長と見たキラキラ光る湖面の夏の思い出。


2015年中禅寺湖
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