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2023.05.12
水村美苗「日本語が亡びる時」

ラテン語が優れて学問の言葉であったのを認識すると、あたりまえのことが見えてくる。のちに世界を制覇するようになる近代ヨーロッパーそれがいかに(学問の言葉)としてのラテン語に創られていったかという事実である。イスラム文化圏で1千年以上保持されていたギリシャ哲学ーキリスト教圏では途中から禁じられるようになったギリシャ哲学に、ヨーロッパの人々がふたたび触れるようになったころからだ。人類最も大きな発見である地動説「コペルニクス的回転」のコペルニクスは現在のポーランドに生まれ、数十年後ガリレオがその地動説を確証するが、彼は遠く離れたイタリアに生まれ、それを擁護したケプラーはドイツに生まれた。さらに数十年後、海の向こうのニュートンがそれを数学的に証明する。近代科学がたどったもっとも重要な道のりは、ポーランド、イタリア、ドイツ、イギリスとヨーロッパ全土を忙しく駆けめぐる道のりである。そして彼らは皆ラテン語で書いた。17世紀後半に活躍したニュートンさえまだラテン語で書いていたのである。(水村美苗:日本語が亡びる時)

水村美苗著「日本語が亡びる時」筑摩書房

 

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