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2017.03.02
桜（さくら）

 

「この桜の絵画はどなたが描いたのですか？」と北海道で高額納税者にいつも5番以内に入っているビルオーナーのO氏に聞いた。僕が札幌で証券マン2年目の時。「銀行の支店長が、たぶん担保に取ったものだろうな」「くれると言ったから、貰った」とそっけなく答えた。小さな電気商から白黒テレビブームで地方の農家まで月賦で販売し財を作ると、その金で札幌の一等地でビル・不動産業に代え巨万の富を裸一貫から築いた人。僕の証券マン人生で多くを学んだ人だが、商いで決めたことは実行され迷惑な、いやなことは一度も無かった。

「宇都宮君は絵画が好きか？」とO氏。「高校まで美大、建築を目指していました」「いまの自分は仮の人生です」と僕が云うと笑われた。しかし、オーナーが座る後ろに飾られた当時8号位の絵画には小さな建物が左に描かれ、その横には桜樹が描かれていた。

この桜樹が大好きで受け渡しで訪問のたび、眺めた。その後、著名な物故作家の桜樹も手にして観たがこの作品を超えるものはない。金山平三の作品で東北の有名な一本桜を描いたものがあり、勧められたが、先方の美術館に今は納まっている。

桜とはいつも惜別の時であり、僕自身情緒不安きわまりない存在。絵画もこの桜を描くことがどんなにか難しいことかと思う。

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